医薬品、特に一般用医薬品の取り扱い、注意について
〔1〕 セルフメディケーション
通常、医薬品は病気の予防ないしは治療など「人の健康」の維持に役立っています。ただ医薬品には有効性(効き目)と安全性(副作用)が本質的に共存していますから、その使用にあたっては、慎重さ、適正さが求められています。
近年の世界的な医療費増大や人々の健康意識の向上を背景として、2000年(平成12年)世界保健機関(WHO)が「セルフメディケーション」を「自分自身の健康に責任を持ち、軽い体調不良は自分で対応すること」と定義・推奨されました。このことからセルフメディケーションの意味は、「薬を買う方が、自分自身の判断で選択し購入できる」。すなわち、セルフメディケーションの主役は医薬品の購入者ということになります。
セルフメディケーションを行うには自分の判断で、購入する薬が安全・安心に選んで使える必要があり、また「自分で手当てする」ための知識がなければ、適切に判断して対応することができません。そこで厚生労働省は、国民がセルフメディケーションを行ううえで、一般用医薬品がどうあるべきかを、一般用医薬品承認審査合理化等検討会で議論され、それにともなっての薬事法の一部改正(現・医薬品医療機器等法)が行われ、2009年(平成21年)6月一般用医薬品のリスク分類などが盛り込まれました。ここから一般用医薬品の新たな販売制度がスタートしました。
一方、2012年(平成24年)度から中学義務教育に「くすり教育」が全面実施され、高等学校でも、2013年(平成25年)から実施されました。
〔2〕 薬の分類
(1) 医療用医薬品
医師の診察を受けた後に受け取る薬。
医師が患者の症状に合わせて処方する。
保険適用。
医療用医薬品
分類 内容
1. 新医薬品(先発医薬品)
すでに製造又は輸入の承認を与えられている医薬品と有効性分、分量、用法、容量、効能、効果などが異なる医薬品として、厚生労働大臣がその製造承認の際、指示したものと定義されている。
2. 後発医薬品
(ジェネリック医薬品)
新薬分(先発医薬品)の特許期限が切れた後、新医薬品(先発医薬品)と同じ有効成分で同等の効能があると厚生労働大臣が認可した薬。
(2) 一般用医薬品
医師の診断なくして、自覚症状に基づいて自己の判断で使用することを目的として供給される医薬品。全額自己負担。ただし、今日、一般用医薬品(スイッチOTC薬)の控除が導入され、すなわち、年間の購入額が12,000円を超えた分を、課税所得から差し引き、納税額を軽減される制度が導入されました。なお、一般用医薬品とはOTC (オーティーシー・over the counter)薬とも呼ばれ、カウンター越しに薬を販売するという意味です。
なお「スイッチOTC薬」とは、ある医療用医薬品が一般用(OTC)薬として販売できるという意味です。
一般用医薬品
分類 内容
1.要指導医薬品
リスクが高く、薬剤師から対面で指導などを受けて購入する。アレルギー薬など、インターネット販売は認められていない。
2.第1類医薬品
リスクが高く、薬剤師から指導などを受けて購入する。H2ブロッカー(胃酸分泌抑制薬、商品の例としてガスター10など)、発毛剤(商品の例としてリアップなど)、解熱鎮痛剤など。
3.指定第2類医薬品
第2類医薬品のうち特別の注意を要するもので、薬剤師、登録販売者から指導を受けて購入する。総合感冒薬など。
4.第2類医薬品
リスクが中程度で薬剤師、登録販売者は医薬品の情報提供に努める。解熱、鎮痛薬、かぜ薬など。
5.第3類医薬品
リスクが低めの薬(ビタミン剤など)で薬剤師、登録販売者が販売する。
※1.要指導医薬品は、医療用薬品から一般用医薬品に移行して間もなく、一般用医薬品としてのリスクが確定していない薬の「スイッチ直後品目」と殺鼠剤(さっそざい・ネズミ取り)のような劇薬を含めた医薬品をいう。「スイッチ直後品目」について、原則3年で一般用医薬品に移行させ、インターネット販売が可能になります。
※2.一般用医薬品の販売を担うため、薬剤師とは別の新たな専門家(登録販売者)の仕組みが、2009年(平成21年)6月より設けられました(都道府県試験)。なお薬局、薬店(ドラッグストアー)で一般用医薬品を求める場合、販売者のネームプレート(薬剤師、登録販売者、事務員)を確認することが大切です。
(3) 医薬部外品
医薬部外品は医薬品ほどではないが、医薬品に準ずる効能・効果を持っているもので、体に対する作用が緩和であることを要件として、医薬品的な効能・効果を標榜することが認められています。医薬部外品については、製品の容器に「医薬部外品」と表示することが義務付けられています。
(4) 生物由来製品
医薬品医療機器法(旧薬事法)に「生物由来」の定義が示されています。その定義とは、人その他の生物(植物を除く)に由来するものを原料または材料として製造(小分けを含む)される医薬品、医薬部外品、化粧品または医療機器のうち、保健衛生上、特別の注意を要するものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて指定するものをいいます。
生物以外のうち特に注意を要するもの、例えば「血液製剤」については「特定生物由来製品」として厳しい規制を行っています。この厳しい規制を行っている理由には、以前、非加熱製剤の使用によって、血友病患者はエイズウィルスに感染し「薬害エイズ事件」として問題になりました。
さらに出産時の出血を防ぐ目的で使用されたフェブリノゲン血液製剤によるC型肝炎ウィルスの感染など、血液製剤による保健衛生上の危害が発生しました。このような危害発生または拡大を防止するための措置を講ずるために、厳しい規制が行われています。
〔3〕 医薬品名
医薬品には、学術名・化学名・一般名・日本薬局方名・商品名・分類名など、いくつかの名称があります。これらのうち、現在は一般名・商品名・分類名の3つが主に用いられています。例を以下に示します。
医薬品の一般名・商品名・分類の一例
分類 非ステロイド性抗炎症薬
一般名 サリチル酸
ナトリウム アスピリン
(アセチル
サンチル酸) メフェナム酸 ジクロフェナク
ナトリウム ロキソプロフェン
ナトリウム水和物
代表的な
商品名 サルソニン アスピリン ポンタール
ボルタレン ロキソニン
〔4〕 一般用医薬品を薬局あるいは薬店にて購入する場合の 基本的な注意事項
(1) 薬に関する相談または薬を求める場合には、必ず薬剤師もしくは登録販売者かを確認(ネームプレートにて判別)。なお事務取扱者は医薬品の販売はできません。
一方、登録販売者は要指導医薬品、第1類医薬品は販売できません。薬剤師はすべての医薬品を取り扱うことができます。
薬局もしくは薬店に勤務する薬剤師あるいは登録販売者が、薬を購入する際の対応が良くない場合は、店を変えるのが望まれます。
「クスリ」は単なる「もの」ではなく、体調もしくは健康維持などに必要な補助的な作用するもので、真剣な対応が求められます。
(2) 薬剤師もしくは登録販売者に伝えるべき内容
1) クスリの使用者
本人もしくは代理(子どもら、父、母、祖父、祖母など)
cf) 子ども、高齢者、妊婦の服用注意については、参考〜かまた会 会 誌8月13日-8に記載
2) 使用者の年齢
3) クスリを求める理由
4) クスリの使用者が過去にクスリの使用による副作用の有無
5) 使用者のアレルギー体質の有無
6) 利用者が医師の治療を受けている
7) 利用者が他の薬を用いている
8) 利用者妊娠あるいはその可能性の有無
9) 利用者が特別な環境で仕事をしている人 (例・ドライバー、高所作業)
(3) 一般医薬品を求める場合、可能な限り少量を求める。
例) 少量の1ビン 少包の1ケース
多量を購入し、長期間保存することにより、賞味期限が切れることがあります。この場合、薬局あるいは薬店側の販売する側は、大量、多量を購入されれば収益につながり、店にとってはメリットがあります。
薬局あるいは薬店のセール時に「多量、大量のお求めはお得」というような広告を見かけますが、冷静に判断され対応することが大切です。
(4) 購入する時の「賞味期限」を必ず確認することが大切。
「賞味期限」が間近のギリギリの商品に注意することが大切です。
(5) 販売者(薬剤師あるいは登録販売者)からすすめられた薬、あるいは購入者が希望する薬について、その薬の使用方法、あるいは注意事項について何の説明もなく、単に販売する行為では、その販売店の信頼性が疑われます。
(6) 使用する薬は用いる人の専用とし、共用はできるだけ避けることが大切です。薬の教養が可能な場合もあるが、用いる人のその時の状況によって異なります。例えば、治療を受けている人、アレルギーを持つ人、妊婦などの人は注意が必要です。 特に目薬の併用は絶対に避けるべきで、必ず個人専用にすべきです。
〔5〕 一般用医薬品を用いる際には、その用いる薬に添付されている使用説明書の内容を、必ず認識することが重要
使用説明書に記載されている内容の例
(くすりの正しい服用…かまた会 会誌本8月13日-9 答に記載)
① 本剤によりアレルギー症状(発疹、発赤、かゆみ、浮腫などを起こしたことがある人は使用(服用)しないこと。
② 本剤を使用(服用)している間は、次のいずれの医薬品を使用しないこと。
(a) 成分が重複するOTC医薬品
(b) 併用に注意が必要な医療用医薬品(すでに処方されている場合は主治医に相談)
くすりの副作用のチェック (くすりの副作用記録)
① くすりの種類
② くすりの使用量
③ くすりの使用期間
④ くすりの服用による症状
⑤ その他
〔6〕 一般用医薬品を服用後、乗物または機械類の運転操作をしてはいけない薬物
(1) 頭痛薬
乗り物酔い防止薬
鎮咳去痰薬(総合風邪薬にも含まれる)
鼻炎内服薬(総合風邪薬も含まれる) 服用後➡眠気
アレルギー治療薬 これらの併用は絶対に避ける!
抗ヒスタミン薬
解熱、鎮痛薬(総合風邪薬)
(2) 胃腸鎮痛鎮痙薬
服用後➡︎眠気、目のかすみ、異常なまぶしさ
乗り物酔い防止
「かぜ薬と乗り物酔い防止薬との併用」は絶対避ける !!
〔7〕 一般用医薬品を使用するにあたって、正しい使い方をしない極端な実例
(1) 「のどのうがい薬」を使用する場合、その原液をある一定量、薄めて使用する指示があるのに、原液をそのまま使用しようとする。
使用する前に「使用説明書」を必ず見ることが大切。
(2) 「消毒用アルコール」を口内炎、口臭に用いようとする。口内炎の場合には、抗炎症剤を用いる。
(3) 「イビキ止め」に口、鼻にガムテープを貼ると効果があると思う人の例。この対応は非常に危険です。「イビキ止め」の用具が発売されています
〔8〕 風邪薬の使用注意事項の例
(1) 総合風邪薬と「咳止め」などの単品薬との併用は絶対に避ける。
総合風邪薬には、多くのかぜ症状を抑える薬が含まれているので
二重作用になります。
(2) 市販の風邪薬と処方された医療用の風邪薬の併用は避ける。
(3) 小児の風邪の治療に、成人用の風邪薬の代用は避けること。
(4) 子どもが風邪をひいたとき高熱によりぐったりすることが見られるが、こ の場合、「ひきつけ」が生じたら、直ちに医療機関にこの診察が望まれます。「ひきつけ」がない場合には解熱剤には、アスピリンなどのアセチルサリチル酸製剤は止め、「アセトアミノフェン」の使用が子どもに対する副作用が緩和されるため、すすめます。一方、気管支喘息のある者は、アセチルサリチル酸製剤の使用は避けるべきです。
(5) 咳止めとして作用する「コデインリン酸塩」は、多くの風邪薬に配合されていますが、この成分は気管支喘息を悪化させてしまうため、注意が必要です。また、血圧の薬やワ−ファリン(血栓症の予防薬)などの作用を増強させることがあるので、この場合の自己判断での服用はしないで、治療の指導を受けている医師あるいは薬剤師に相談することが望ましいです。
(6) 小児用の風邪薬の1つにシロップ剤が商品化されているが、母親が通常のジュースと同じ感覚で用いる事は絶対に避けるべきです。
(7) 漢方の風邪薬を用いる際の注意事項
「漢方薬には副作用がない」というイメージを持つ人は少なくないです。
漢方薬も薬の一つであるので、その取り扱いは西洋薬と同じように注意を払うことが必要です。
風邪薬によく用いられる主な漢方薬
1) 甘草(かんぞう)
甘草は風邪薬など他の漢方薬にも含まれています。こういった甘草を含む漢方薬を、自分の判断で数種類を一度に服用すると「血圧を上げる」ことになりかねないです。特に高血圧の人は甘草を含む成分の市販薬の服用には一層の注意が必要です。
2) 葛根湯(かっこんとう)
風邪のひき始めに用いられる葛根湯に含まれる「麻黄」(まおう)は、エフェドリンという成分が入っています。このエフェドリンは交感神経興奮作用があり、血圧上昇、動悸、胃の不快感などをもたらすことがあります。したがって、麻黄を含んだ漢方薬は高齢者や血圧の高い人もしくは心臓病を持っている人は注意が必要です。
3) 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
くしゃみや鼻水などに適すると言われている小青竜湯は、高齢者、虚弱な人、胃腸の弱い人、肝機能障害のある方は注意が必要です。
〔9〕 胃腸薬の使用注意事項の例
(1) 総合胃腸薬と他の単品との胃腸薬との併用は避けるべきです。
(2) スイッチOCT薬の胃腸薬「ガスター10」
生体に含まれる「ヒスタミン」はアレルギー反応のきっかけとなる作用(H1)と胃酸分泌を促進させる作用(H2)を持っています。
このアレルギー作用を抑える薬が効ヒスミン薬、一方、いい胃酸分泌の作用を抑え、胃潰瘍の治療に用いられるOTC薬の代表に「ガスター10」が販売されています。
この薬を使用する際には、薬剤師に使用注意事項を正しく確認することが大切です。
(3) 胃痛・腹痛時に用いる一般用医薬品は、緑内障、前立腺肥大症、胃潰瘍性大腸炎、腸閉塞の症状を悪化させてしまうことがあるので、これらの症状がある場合の、この薬の使用については薬剤師によく相談して対応すべきです。
(4) 二日酔いの薬はありません。二日酔いは害あって益なしなので、酒の飲み過ぎには注意しましょう。
〔10〕 頭痛薬の使用注意事項の例
日常経験する頭痛の多くは、風邪、ストレス、体質などによるものですが、軽い頭痛の多くは数日間続いていた後に自然に消えていきます。
頭痛が1週間以上続くか、あるいは短期間であっても吐き気やめまいを伴うような場合は、医療機関での受診が必要と思われます。
市販の頭痛薬は、例えば人ごみにて発したときやはりストレスを感じたときに起こりやすいタイプの頭痛などの習慣的に頭痛があるときに役立ちます。
この市販の頭痛薬の成分に「アセトアミノフェン」か「イブプロフェン」のいずれかを主成分とする痛み止めが効果的で、かつ安心と思われます。
なお「アセトアミノフェン」や「イブプロフェン」は歯の痛み、傷口の「痛み止め」としても用いられます。
但し、これらの2種類を含めたこれらの鎮痛薬は、連用により「習慣性」となる危険を伴うことがありますので、これらの使用には正しく用いるよう十分に注意を要します。
〔11〕 外用薬の使用注意事項の例
通常、「外用薬」とは、皮膚や鼓膜など体の表面に適用する薬のことをいい、これらの代表的なものに、塗布薬(とふやく・塗り薬)、貼付薬(ちょうふやく・貼り薬)、口内・咽の薬、目薬、坐薬などがあげられます。
外用薬も’’くすり”なので内服薬と同様、使用の注意が必要です。
(1) ステロイド外用薬
「ステロイド」とは、ホルモンを化学的に分類した種類の1つで、それには’’副腎皮質ホルモン”と”性ホルモン”が含まれますが、この中の”副腎皮質ホルモン”の働きを利用する薬を「ステロイド薬」といい、その主な作用は、次の通りです。
① 炎症を沈める作用
② 湿疹やかゆみを抑える作用
③ 痛みを抑える作用
以上の作用によりますと寂しいけど「ステロイド外用薬」はアレルギー性の皮膚炎、湿疹、虫さされ、蕁麻疹(じんましん)、漆(うるし)かぶれ、火傷などに効果があるといわれ、皮膚外用薬として使用されています。
ステロイド外用薬には、その作用の強さによって5つのランクに分類されています。そのうち一般用医薬品として販売されているステロイド薬は、その作用が比較的弱い分類に制約されています。
ステロイド外用薬を使用する場合の注意事項
皮膚に塗った薬は生体に吸収されます。皮膚から吸収される薬の量は体の各部でかなり違いが見られます。特に吸収率の高いのは頬の部分、これに続いて高いのが額(ひたい)、脇の下や陰部で、これに対し足の裏は角質層が厚いため、最も吸収されにくいです。
したがって吸収率の高い部分のステロイド薬の使用は、十分なる注意が必要です。なお、ステロイド薬を含む外用薬を用いる場合は、いったん自分の指や手のひらにつけて塗ることが多いですが、そこからの薬の吸収も忘れてはならないことです。
手のひらの吸収は、足の裏に比べて5倍ほど多く、外用薬を塗った後は、手をよく洗うことが大切です。
一方、市販薬の「ステロイド外用薬」を購入する場合には、薬剤師、登録販売者に相談して適切な薬を使用することが大切です。
(2) 傷薬
1) すり傷、切り傷の手当
転んだり、すりむいたときの傷は出血しても、まず、その部分を水道水の流水でよく洗い、細菌感染しないよう泥、砂、ほこりなどを取る必要があります。その際、はがれた皮膚の一部が残っている場合は無理矢理はがさないようにし流してで、そっと流すことが大切です。
通常の軽い傷なら消毒は原則として必要がなく、水で洗った後は、傷口を乾かさず、さらにガーゼを直接当てないで、市販の「高機能絆創膏」を使うと効果的といわれています。したがって、日常、この「高機能絆創膏」を用意しておくと便利です。
傷の部分を紫外線に当てるとシミになって傷跡が残りやすくなるので、紫外線に当てない注意が必要です。
なお ①傷による出血が止まらない
②傷口が開いている
③動物にかまれた
④傷が1週間程度たっても治りが悪い
などのケースの場合は、医療機関にての治療が必要になります。特にノコギリ、自転車、自動車などの大きな事故による傷の場合は、破傷風菌の感染の注意が必要なので医療機関にての処置対応が不可欠です。
2) 市販されている傷薬について
小さな傷の場合、先に述べた処置を施せば、傷薬を持ちたくとも原則として済みますが、どうしても医療機関にて処置をしてもらわなければならない傷の場合、一時の応急処置に用いる消毒薬に軟膏を塗ると縫合しにくくなるので、無色透明な液体消毒薬を用いるのが無難です。
日常用意しておくべき傷薬については、事前に薬剤師、登録販売者と相談して正しい使用方法の指導を受けることが必要です。
(3) 肩こり、筋肉痛の薬
肩こり、筋肉痛に消炎・鎮痛作用のある「塗り薬」に、現在、よく用いられている成分には、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、ヒドロキシカムなどがあります。
これらの成分は、処方箋による医療用医薬品と市販薬の一般用医薬品(スイッチOTC薬)の両方に使用されています。
これらの薬は「アスピリン」と同様、強い鎮痛・解熱の役割を発揮、さらにこれらの副作用は、やはり「アスピリン」に似ていて、胃潰瘍、胃腸の出血、肝機能障害、貧血、喘息、けいれん、かぶれなどが起こります。このなかで、特に「インドメタシン」は、かぶれを起こしやすいです。
また、高血圧、動脈硬化、糖尿病などに使われている薬に対して、効果を増強する場合もあります。たとえ「外用薬の塗り薬」であっても体内に成分が吸収されてしまうため、これらの病気で治療受けている人、あるいは喘息の人などは十分な注意が必要です。
(4) 日本薬局方白色ワセリン
薬効成分は含まれておらず、厳密にいうと薬ではない「白色ワセリン」は肌を守り、皮膚の角質を柔軟にし、乾燥を防ぐと言う作用があり、酸性でもアルカリ性でもなく、刺激がほとんどないのが特徴で、塗り薬のもとになる成分にも使われています。
「白色ワセリン」は湿疹、虫刺され、かぶれ、ケガ、やけど、鼻炎(綿棒で鼻の入り口付近にぬる)、カサカサ肌の手入れなど、様々な目的に使います。
薬ではないため副作用の心配はありません。
なお「日本薬局方」とは、厚生労働大臣が定めた医薬品の企画書をいい、つまりメーカーオリジナルの商品ではなく、国の企画に従って作られたものです。
白色ワセリンは家に1個あると便利です。
(5) 貼付剤(ちょうふざい・貼り薬)
「貼付剤」とは粘着剤に医薬品を混ぜて、布などに塗り、皮膚に湿布して用いる製剤で、一般に「貼り薬」と言われています。
一方、湿布とは、ある程度の水分を含んだ布を意味し、ガーゼや布などを薬液に浸して使う薬が「湿布薬」といって、冷たい水や熱い湯などに布を浸し、絞って使う「湿布」に由来しています。
1) 肩こり・筋肉痛の貼り薬
貼り薬は、肩こりや筋肉痛の治療に古くから使われてきましたが、今日では匂いがないもの新しいタイプが開発され、使いやすくなって来ています。
薄いフィルム状の貼り薬は、プラスター、少し厚手のものはハップ薬と呼ばれています。
貼った時に、ヒヤリとするタイプ(冷感)と暖かく感じるタイプ(温感)があり、冷感も温感も中身の成分はほとんど変わりません。消炎・鎮痛薬とビタミン(トコファロール酢酸エステル)が主成分です。
冷感タイプは、ひんやりする「メンソール」、温感タイプは、唐辛子エキス等が入っています。
打ち身や捻挫、筋肉痛などの突発的な痛みや患部がはれたり、熱を持っている場合は炎症を抑えるためにただちに冷やすことが大切です。
一方、慢性的な肩こりや筋肉痛の場合は、温めて血行良くすると良いと言われています。
「温める」か「冷やす」か、わからない場合は、温かい暖かいタオルや温水のシャワーをあてたとき、あるいは入浴時に温まると楽になる場合は「温感タイプ」を、冷たいタオルや冷水で冷やした方が気持ち良い場合は「冷感タイプ」を選ぶのが良いです。
貼り薬にも塗り薬と同じ成分が用いられる場合が多いので、特に「インドメタシン」「ケトプロフェン」を主成分とする貼り薬は、喘息の副作用を起こす可能性があるので、塗り薬と同様、喘息を起こしたことがある人は、使用を避ける必要があります。
2) 貼り薬の正しい使い方
① 1 日に1〜2回張り替える。
長時間貼り付けると、皮膚が弱い人は、かぶれてしまうことがある。
② 貼る部分の皮膚を清潔にしてから貼る。
汗や水で幹部が濡れている場合は、よく拭いてから貼る。
③ 皮膚がかぶれやすい場合は、直接貼らず、患部にガーゼをあて、その上から貼る。
④ 入浴前後、30分以内に貼らない。とくに温感タイプの貼り薬を入浴直前にはがして、また貼ったまま入浴すると激痛が起こることがあるので注意が必要。入浴後再び薬を貼る場合は、30分以上は間をおき、皮膚の温度が下がってから貼るようにする。
〔12〕 口内、喉の薬の使用注意事項の例
のどの痛みは風邪をひいたときなどに、口の中に口内炎、舌炎(下が荒れて痛む)、口角炎(こうかくえん・唇の角のひび割れ)などの症状が生じることがあります。
これらはいずれも細菌、ウィルス感染やビタミン不足などが原因と考えられます。これらの症状を抑える方法として炎症の緩和、抗アレルギーさらに殺菌などの作用を有する成分がトローチ、あるいはうがい薬として使われています。うがい薬の1つにヨード含む製品(イソジンうがい薬など)がありますが、ヨードはアレルギーを起こすことがあるため、体質によって使えない場合があります。
アレルギー体質がなくとも繰り返し使っているうちに異常きたすこともあるので、連用は避けるべきです。
〔13〕 目薬の使用注意事項の例
市販の目薬は花粉症などのアレルギーによる「涙が止まらない」、「目やにが出る」、「目がかゆい」などのアレルギー反応を止める作用、疲れ目が慢性化した眼精疲労、麦粒子(ばくりゅうし・ものもらい)等の目の感染症などの場合に使用されます。
一方、コンタクトレンズの目薬が市販されています。
(1) 洗眼剤
コンタクトレンズやゴミで傷ついた角膜を修復するなどの目的で、眼を洗うための「洗眼剤」が商品化されています。しかし基本的に眼は洗わないほうが良いです。涙が眼の汚れを洗い流す役目を果たしていて必要がないからです。
これは洗眼剤を溶かした水溶液に顔をつけ、眼を洗浄するのですが、この不適切な行為によって感染症やアレルギー反応を起こしかねないので、むしろ水道の流水で洗顔した方が無難です。
このことから洗眼剤で眼を洗う事は避けるべきです。
(2) 目薬を使用するときの注意
1) 個人用の目薬を必ず用意することが大切です。
1つの目薬を共有することにより、感染の原因となることがあります。
2) 点眼薬は雑菌に汚染されやすいので、使用前に手をよく洗うことが大切です。
3) 点眼薬の容器の先を目から2センチほど離し垂直に1滴落とします。
4) 点眼薬をつけた後は、ふたを閉じ、目頭を約1〜2分間を押さえます。これで、目薬の成分が鼻、口などに流れ、目の鼓膜から吸収されます。
5) 目からあふれた薬は、ティッシュペーパーなどで、そっとふきとります。
6) 2種以上の目薬を使う時には、5分程度の時間を置いてから使います。
7) 目薬は直接日光を避け、保存は常温か、冷蔵庫に入れます。使い始めたら2ヶ月程度で使い切ります。
〔14〕 坐薬の使用注意事項の例
座薬は、肛門、膣、尿道などに挿入し、体温によって融解して薬効を発揮するようにした製剤です。
医療機関では、様々な薬が坐薬として使われていますが、一般用医薬品はあくまで副作用が少ないことが優先され、種類が限られています。それには、解熱、鎮痛や痔剤などを治す坐薬が対象となります。
座薬は内服液に比べて、副作用が少ないなど坐薬には、いくつかのメリットがあります。特に吐き気がひどくて薬を服用できない時や子供が薬を服用するのを嫌がるようなときには便利です。また痔のように薬を局所的に作用させたい場合に効果を発揮します。
(1) 坐薬の使い方
坐薬のほとんどが肛門から直腸に挿入して使う場合が多いですが、坐薬を自分で使う場合はしゃがんで挿入するのが確実です。
多くの坐薬は、片方(挿入側)が少し細くなっており、それを先に向けて肛門に入れます。この時、坐薬の先端で肛門を、くすぐるようにします。
しばらくすると肛門の緊張が緩み、かつ坐薬の表面が体温で溶けて、スムーズに入るようになます。力まかせに無理に挿入してはいけません。
家族などの他人が坐薬を挿入する場合は、本人が横になってもらい、お尻の片側を持ち上げるようにして、前に述べた要領で肛門にいれます。
この姿勢は、お互いの抵抗感も少なく、かつ確実に入れることができます。
いずれにしても、しっかり奥まで入れないと、あとで飛び出してしまうので注意が必要です。とくに子供や高齢者の場合、しばらく手で肛門を抑えていた方が良いです。
(2) 坐薬の取扱注意
① 座薬は座って、口から絶対に飲んではいけません。
② 坐薬をトイレに置くのではなく、坐薬の成分は低温を好むので、使用するまで、他の食品と区別して「坐薬」とわかるように冷蔵庫に保管することが大切です。
☆参考資料
(ア)山田正明(2010年)
医療事務専門職のための医療知識➖病気と薬➖
ダイエックス出版
(イ)山田正明(2012年)
介護に役立つ薬の知識➖◎の知識と介護への応用➖
ヘルスシステム研究所
(ウ) 山田正明(2013年)
成人・高齢者を対象とした病気と検査と薬の基礎知識
社会保険出版社
(エ)久保純子(2013年)
薬のことがわかる本 ➖賢く選んで上手に使いましょう➖
社会保険出版社
(オ)高久忠◎・矢崎義雄監修(2016年)
治療薬マニュアル2,016 医学書院会
(カ)山田正明(2016年)
わかりやすい薬の話 日本工学院専門学校
かまた会会報誌 vol.13
(キ)平石貴久(2006年)
医者以前の健康の常識 講談社
(ク)岡田正彦(2008年)
薬を買うときに読む本 日本評論社